8月4日 Daichi Mabashi

「お母さん。台風の中、白神山地に行くのだから、雨具を準備しておいて。」
そんな話をホームステイ先の主人から聞きつつ、塩辛い焼き鮭の朝食を食べていた。
外を眺めると、雨と風の協奏曲。まるでこんな嵐の中を本当にハイキングするのかと
いう、不安と好奇心とが入り混じる心情を、台風が奏でているようだった。
朝の集合場所で変更されたスケジュールを聞いて、デリの中には安堵感が広がるが、
一方で私の中には少々残念な感じもあった。
実際に白神山地に入ってみると、どこもかしこも木ばかりで、ただのハイキングであ
れば歩いて軽く汗を流して、それで満足感が得られるだろう。
しかし、ふと耳を澄ます。キツツキの軽快な営みの音、風に揺られる木々の漣(さざ
なみ)。それらが森の静寂を破る。太古の森と呼ばれる白神山地の生き方を垣間見た。
午後からは、白神山地を紹介するビデオを見た後、市の人々の協力で太鼓を演奏する
機会があった。太鼓は簡単そうに見えたが、実際にやって見るとリズムや打ち方の強弱など、音楽的センスが皆無に等しい私には、やはり無謀であった。
帰りに温泉に寄った後、ホームステイ先のご家庭で夕食を頂いた。てんぷら、刺身、
きりたんぽと共に、途中から秋田特産の日本酒を勧められた。温かい田舎料理に舌鼓を打った。
夕食の席で、秋田が抱える様々な問題を聞くことができた。過疎化・少子化・農家の
後継ぎなど、秋田だけでなく全国の地方が直面している課題に触れた。現在、私も大分県に住んでいるため、他人事の問題ではない。日本のことがまだまだ勉強不足であると、実感した。